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カメラを持って"世界"を歩こう。

[あなでじ写真記]

毎週だいたい金曜日に更新するblog。

2025/11/14

フィルムカメラと伊勢鉄道旅∣NikonFM2と観光特急しまかぜ

前回のお話

 ここ5年くらいは毎年欠かすことなく伊勢に参拝している。日本人なら一生のうちに一度くらいは…というものであるが、大阪に住んでいると近鉄で1本なので非常に行きやすい。毎年々々お参りしていると特別感はもはやなく、どちらかと言うと私の1年のこの時期に儀式として組み込まれているようなものである。

 既に弊blogでも2回書いている。初回はD780で前回はF2にHP5+を一絞り増感して使用した。今回のカメラはNewFM2でフィルムはSUPERIAPREMIUM400。富士フイルムのカラーネガは1年半ぶりだった。

 最近はF2に付きっきりになりがちだが、鉄道旅でF2は少々重すぎるのでFM2が丁度良く、一眼はFM2だけというのも久しぶりだった。レンズも複数持つと重いのでAiNikkor50mmf/1.4Sのみとした。

 さて、今回の旅の経路であるが、ここ最近は贅沢に行き帰りとも特急を使ってきたのだが、久しぶりに高校生だった頃の貧乏旅をしようと往路は特急券不要の急行電車で行くことにした。急行電車とは言っても桜井から榊原温泉口までは各駅に停車するうえに退避可能な駅では悉く特急の通過待ちになり、長く止まる場合は特急2本に追い越されることもある。そのため大学生になり旅費に余裕が出てくるにようになってからは少なくとも帰りは特急でいつからか往路も特急で行くようになった。

 そんなわけではあるが、今年は11月に2回も鉄道旅を企てているので費用はできるだけ削りたいというのと、初心を思い出そうということで久しぶりに往路は急行にしたわけである。

 当日は始発の電車で上本町に向かい、乗れる中で最も早くに出る急行に乗車した。今回は参拝後一度賢島まで行ってから帰る計画であるので、可能な限り早く伊勢に付きたいためである。伊勢方面行きの電車は地上ホームから発着しているので、地下から地上に上がる。しばらく待っていると電車が入線してきた。今回伊勢までお世話になる車両は大阪線最古参級の車両で前照灯が奈良線内ではいなくなったタイプの車両だ。新しい車両よりも古くて機械らしい車両が好きなので私としては大当たりな車両だった。

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 定刻になると頭端式のホームから抜け出し、隣の駅である鶴橋に停車。まだまだ早い時間なので鶴橋から乗ってくる人も少なかった。鶴橋を出ると複々線の広々とした線路を走り二駅先の布施に停車。

 布施からは奈良線と別れ、大阪平野をしばらく南下していく。高架に上がったり下りたりを繰り返して少しずつ山に接近し、JRの関西本線を跨ぐとそのまま大和川を渡る。河内国分に停車後、五位堂、高田、八木など主要駅にのみ停車し大和平野を駆け抜けていく。先述の通り桜井からは各駅停車になるので一気に爽快さはなくなり、地方のローカル線のように山と谷を交互に上り下りするような状態になる。それでも駅間隔は長いので5分以上は走り続けているような感覚だ。

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 ゆっくりと急ぐことなく大和平野から宇陀、名張、伊賀の小さな盆地を繋いでゆき、西青山の駅を超えると長いトンネルに差し掛かる。まっすぐで私鉄のトンネルとは思えないような大きなトンネルを100km/hを少し超えた速度で突き進む。すぐに気圧で耳がおかしくなり、床下からはモーターの唸る轟音とともに独特のモーターが焼けたような匂いが漂ってくる。坑口の手前から下り勾配に転じ、長いトンネルを抜けるとすぐに以西平野だ。桜井から長い時間をかけて登ってきたが、下りは一瞬だった。

 各駅に停車する区間もようやく終わりとなり、再び快速運転に復帰する。榊原温泉口の次の名古屋線との合流地点である伊勢中川に停車し、そこからは一気に進んで松阪、伊勢市となる。伊勢平野は見渡す限りの水田地帯で遮るものは何もなく、列車はトップスピードでラストスパートをかける。あっという間に伊勢市に到着し、2時間半座り続けた座席を離れるときがきた。

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 撮り鉄よろしく、車両の顔を撮影し出ていくのを見送ったら跨線橋を渡ってJR側の改札へ。今回はレンタサイクルを予約しているので受付場所となっている駅前の手荷物預かり所へ向かう。列車の到着時刻が8:53で受け付け開始が9時なので絶妙なタイミングだ。手荷物預かり所には既に荷物を預けたい人の列ができているが、建物内のカウンターで声をかけると別に案内してもらえる。必要な用紙を記入し、取り扱いの説明を受けたら観光に出発だ。

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 まずは外宮。入り口に架かる火除橋の右側に守衛があり、小屋の裏に駐輪できるようになっている。橋を渡り手水を過ぎると一の鳥居が見える。参道を進んでまずは正宮に参拝。その後境内にある全ての摂社にお参りし、外宮を後にした。

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 次は内宮。3kmほど離れているが電動自転車を借りたので楽々だ。この時期に伊勢に行くと駅伝で交通が麻痺してしまうので俊敏に動ける自転車がある意味最も速い交通手段だ。御幸道路を進み20分ほどで到着。時間はまだ10時半だったが、昼ごはんが混むので先にいただく。開店早々にいったのだが、既に3組が店の外で待っていて驚いた。しかし、食べるものは伊勢うどんと決まっているので、15分程度の待ち時間で入店でき、注文してしばらくすると出てきた。

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 今回頼んだのは伊勢うどん定食。温かい伊勢うどんに白ご飯、煮豆(だったかな)、漬物が付いて\1,000円だった。伊勢うどんの柔らかい極太麺に醤油の濃いタレで食べるスタイルが私は好きなので、伊勢に行くと必ず食べている。好き嫌いが分かれるが、元々伊勢は真夏に行っていたので暑くて食べにくいときでも伊勢うどんは食べやすく非常に良かった。そんなことから現在は11月にお参りするようになったが、食べ続けているのである。

 外で待っている人もいるのでササッと食べて内宮へ。宇治橋を渡って定番の撮影スポットへ。場所が分かりにくいので意外と人がいない。

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 五十鈴川を渡ったら神苑の横を通って行く。

 一の鳥居を潜ると五十鈴川に降りられるようになっており、人気のスポットである。川の中にはいつも小さな小魚がいる。

 伊勢神宮の魅力はとにかく緑が多いこと。今回は富士フイルムのネガカラーなので緑を撮っていると非常に楽しい。

 大きなクスノキに巨大な杉。

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 樹皮にはびっしりと苔が生えていて悠久の時の流れを感じる。

 まずは外宮同様に正宮から参拝し、荒祭宮や風日祈宮などの摂社を回っていく。

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 いつもは参拝が終わっても時間が余るのでダラダラしているが、今回は少し離れたところまで餅を買いに行ってそれから賢島まで行きたいので、すぐに駐輪場に戻って餅屋を目指す。餅屋は去年も行っている上に元々は外宮から内宮までの移動は徒歩だったので伊勢も半分土地勘ができつつある。途中で駅伝のために交通規制が敷かれていたが、思ったよりも時間がかからずあっさり到着できた。

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 伊勢の土産と言えば赤福であるが、あまりにも有名で近鉄沿線ならどこでも買えてしまうので魅力が薄い。そんなことから前回に引き続き二軒茶屋餅にした。赤福に比べると隠れた存在ではあるが、創業は1575年だそうで今年で創業450年にあたるそうだ。本能寺の変が1582年なので創業当時はまだ信長が生きていたことになる。安土桃山から6つの時代を通して存続してたと考えると時の長さを感じずにはいられないし、戦国時代から続けられてきた餅を食べていると感慨深いものである。京都人が「明治創業の老舗ww」と言うの少し納得してしまう。

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 肝心の餅の写真を撮り忘れていたのだが、二軒茶屋餅を購入。竹の皮に包まれた10個入りを選んだ。二軒茶屋餅はきな粉餅で中にあんこが入っている。餅は柔らかく、あんこと合わせても甘すぎず緑茶が非常に合う。主要な観光地からは少し離れるが買いに行く価値はあるだろう。

 思ったよりも時間が余ったので周辺で少しだけゆっくり過ごして伊勢市駅に自転車を返しにいくことにした。前回と違って今回はある程度道を覚えているので思ったよりもあっさりと駅にたどり着けた。再び来た時のホームに向かいさらに線路の先を目指す。利用客が少ないからか通常の特急料金は520円するが、伊勢志摩周辺では300円で乗れたので迷いなく特急を利用。300円で20分程度短縮できる。伊勢には何度も来ているが、五十鈴川よりも先に行くのは今回が初めてだ。

 鳥羽までは割とまっすぐな線路を快調に進み、伊勢市で別れたJR参宮線と再び交わる。松阪の辺りから並走を続けてきたが参宮線はここで終点となり、この先は近鉄線のみとなる。鳥羽からは一気に線形が悪化し、急なカーブが連続する。ひどいときには先頭車が3つ前の車両が窓から見えるほどである。朝早くから動いているので暖房の効いた社内は快適で15分ほど寝てしまった。目が覚めた頃には賢島の手前まで到達しており、小さな橋を渡って島に上陸した。小さな島にある駅とは思えないほど線路が分岐し4面5線の頭端式ホームに進入。ゆっくりと停車し、その後下車した。

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 これから大阪に帰るのだが、わざわざここまでやってきたのは観光特急「しまかぜ」で近鉄線内を全線走破するためである。いつもは宇治山田から乗車するだが、乗車時間が短く満足できない。そこで端の駅までやってきた。ここから大阪難波まで乗車すると2時間半程度乗車できる。今回の旅の本題はお伊勢参りであるが、裏テーマはしまかぜの乗車である。

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 フィルムを使い切ったのでここからはスマホ写真で失礼するが、乗車後まず初めにするのはカフェ車両での食事。まだ16時だが、1日4食スタイルで早速いただく。早い目に行かないと宇治山田や伊勢市でたくさんのお客さんが乗ってくるので急ぎたい。

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 値段はそこそこするが、松阪牛カレーを注文。外で食べるカレーは往々にして具が無いが、しっかりと牛肉が入っており、味も満足のいくものだった。食堂車で揺られながらおいしいカレーをいただくのは至高だ。伊勢市を過ぎると案の定カフェ車両も混んできたので自席に戻ることにした。腹も満たされたところでしばらくまったりして過ごす。伊勢平野を時速100km以上で駆け抜け、安定した直線の線路を滑るようにして進む。次第に太陽は傾いてゆき雲はオレンジに色づいてゆく。やがてピークに達すると一気に白に戻り今度は空が青に落ちてゆく。

 大阪まで残り2時間程度の乗車時間が残っているわけだが、この後ずっと車窓を眺めたりして過ごすのかというとそうではない。今度はワゴン販売でのバウムクーヘンを購入し、再びカフェ車両に行って紅茶を注文して戻ってくる。おいおい、食べすぎじゃないかと言われそうだが、食べまくる。車販なので普通に街中で買うよりも値段はどうしても高くなる。しかし、列車に積載したいといけないことや乗客を乗せられない食堂車の連結などを考えると決して高くはないだろう。昨年は点心セットだけを食べていたのだが、一人で隣に乗っていたやや年配の女性がカレーを食べてケーキセットを頼んで締めにコーヒーと「すご…」と思わざるを得ない食べっぷりでちょっとした衝撃だった。確かにそれだけ注文すると結構な値段にはなるが、JRなど他社で同様の体験をしようとするとかなりの高額になるし、もう失われてしまった寝台特急での旅を簡単に体験できる最も身近な選択肢なわけだ。そういうことを総合的に考えてみると、むしろ安いのではないかとさえ感じてしまった。

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 紅茶をすすりながら車窓を眺めたり、スマホをみたりぼーっとしてみたり。にぎやかだった社内も次第に乗客たちは眠りに落ちてゆき時々聞こえるロングレールのわずかな継目の音だけが聞こえる。

 大阪と奈良の県境を越えることには辺りは完全に夜になっており、そろそろ終点だ。布施で奈良線と合流し、鶴橋を過ぎたら地下区間に入る。2時間半の乗車時間もいよいよ終わりだ。大阪難波に停車し、すぐに回送に入るため慌ただしく下車。ホームに下りて数分するとすぐに引上線に入っていく。

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 これで伊勢旅完結である。後は自宅までの消化試合となるため本稿では割愛させていただく。往路は特急料金のかからない急行電車での移動で復路は観光特急のしまかぜでの帰阪。往復で最安値と最高級を一気に体験したのでなかなかのコントラストだった。行きの貧乏旅がダメかと言うとそんなわけではないし、高額な特急券が無駄かというとそういうこともない。それぞれ双方の味があるし、醍醐味も全く別物だ。何かに偏ることなく満遍なく色々な旅をしてみるのが一番であると考えている。また来年もお伊勢参りをするので次はどのようにお参りしようかと思いつつ、本稿も終了とする。今週も皆様にとって良き週末となりますように。

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