[アナデジ写真記]
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2025/8/29
フィルムカメラに慣れたら-白黒フィルムのすゝめ
前回はポジフィルムについてお話ししたので今回は白黒フィルムを。ポジフィルムの写りは実に素晴らしいもので、撮って楽しい、見てもっと楽しいフィルムだ。鮮やかで非常に鮮明に写るのが先週のポジフィルムだったが、今回はその正反対を行く白黒ネガフィルム。彩度はゼロで「映え」もクソもないのが正直なところ。しかし、撮って楽しい、見て楽しい、そしていじって楽しいのが白黒ネガである。ポジフィルムやカラーネガフィルムみたいに分かりやすくはないが、慣れてしまえば非常に中毒性がある。フィルムカメラを使う理由として実は白黒フィルムを使えるというのが最も大きいかもしれないとさえ私は思う。そんな白黒ネガの話をフィルムカメラに慣れた人の次の一歩として今回はご紹介したいと思う。
白黒フィルムの種類
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ここでの白黒フィルムは白黒ネガフィルム。明暗が反転した紫色のフィルムだ。一応白黒ポジフィルムもあるにはあるが、B&Hでしか見たことがないし現像が困難である。
現在白黒フィルムを作っている代表的なメーカーがKodak、HARMAN(ILFORD、KENTMERE)、FOMA、ADOXとFUJIFILMと言ったところだろう。銘柄も意外と多く、OEMや再販品を除いて20程度存在している。最近だとOEMではあるが、Leicaも白黒フィルムを販売するようになって各社なかなかに力が入っている。フィルムはもうダメと言われて久しいが、白黒フィルムのラインナップがここまで多いのはやはり歴史に裏付けられているのと表現の豊かさがあるからだろう。写真は白黒から始まり、巨匠たちも白黒で撮影してこられた。
白黒フィルムの楽しいところ
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まずは白黒写真の楽しいところについて。カラーの写真と違って色情報を使えない。大きな制約ではあるのものの、色がないと言うのは光を写すということに集中できる。色があるとどうしても色味がどうかとか、発色がイマイチとか雑音が多くなる。しかし、白黒写真ではそれらを気にする必要がなく、光と影に集中できる。photographの訳として「写真」が充てがわれたわけであるが、実は「光画」が正しいという説もある。まさに光で描く絵なわけで、色を封じることでより鮮明にはっきりと光を捉えられるだろう。
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白黒で写真を撮るには3つの方法がある。1つはデジタルカメラで写真を撮って後からパソコンで彩度を抜いて白黒にする。カラーで撮影しているので、気に入らなければカラーに戻せるという柔軟性もあり最も一般的であろう。しかし、カラーに戻せるということは甘えでもあり、白黒でしか撮れないというような圧力はない。
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そこで2つ目の方法はLeicaのモノクローム機やPENTAX K-3 Mark III Monochromeのように白黒でしか撮れないデジタルカメラを使う方法。普通のカメラはイメージセンサでは一画素ごとに表現できるが決まっていて、一回の露光で赤と緑と青だけの写真を一枚ずつ三枚撮り、これを合成するような形でカラーの写真を作成している。そのため、普通のカメラから白黒写真を作るとどうしても少しぼやけた写真になってしまう。しかし、白黒でしか撮れないイメージセンサでは一つの画素ごとに白黒の濃淡を直接表現できるので、よりハッキリしていてシャープな白黒写真となる。しかし、白黒写真のためだけにカメラを買うのは勇気がいるし、Leicaは現実的でない。
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そして3つ目は今回の白黒フィルム。フィルムなのでフィルムの中にある無数の銀塩の結晶の量により白黒の濃淡を表現する。フィルム写真は無数のツブツブで構成されていて、デジタルカメラで撮った白黒写真とは全くの別物である。フィルムにもよるがデジタルカメラに比べてザラッとした質感になり、デジタルのようなやけにツルツルした写真にならなくて良い。それに一口に白黒フィルムと言えどもどのフィルムを使うかによってその様子はかなり異なるので、写真の質感やコントラストを変えられるのも大きい。白黒フィルムを使えば白黒でしか撮れないという縛りを設けつつも、1本撮りきってカラーネガフィルムに入れ替えれば再びカラーで撮れるのでこの柔軟性は非常に便利だ。
普通のデジタルカメラで白黒に編集した写真を一般的だとすると白黒でしか撮れないカメラや白黒フィルムで撮る写真はやはり全くの別物である。白黒フィルムの独自性を使えると言うのは白黒写真を撮るうえで非常に大きなアドバンテージだと思う。
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また、白黒フィルムはカラーネガに比べて自家現像が容易で撮ったフィルムを自分で現像しやすい。自分で現像できるのでどの薬液を使うか、どのように現像するのかも自分で選択できる。現像方法を選択できるということは、増減感も自由で感度400のフィルムでも2絞り増感すれば感度1600相当となり、都市部であれば夜間でも撮影可能となる。フィルム写真をするうえでこの柔軟性の高さは実に素晴らしく、私がフィルムカメラの第2歩目に白黒フィルムを勧めたい理由の第一位だ。
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現像が容易であることに加えてプリントも比較的容易で、撮影から写真としてのアウトプットまで全てコントロールしやすい。デジタルカメラでの撮影してから編集し、印刷まで行うプロセスを全てアナログで実行可能だ。この拡張性の大きさも白黒フィルムを使う大きなアドバンテージだ。さすがにこれはかなり歩いた先であるが、私も用品類を揃えて挑戦したいところだ。
白黒写真を撮るコツ
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デジタルならまだしも、フィルムになると写りが分からず、撮影後にスキャンした画像を見ても釈然としないのもよくあること。
結果がすぐに見えない上に視界はカラーなので、よくわからなくて当然である。また、スキャンしてよくあるのが、画面全体がほぼ同じグレー1色であること。ここで紹介したいのは白黒写真におけるフィルターワーク。フィルターと聞くとNDフィルターやPLフィルターのようなフィルターを想像するが、白黒写真で使うフィルターは赤や黄色、緑などのちょっと引きそうなフィルター。
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例えば赤のフィルターを付けて赤い被写体を撮ると白くなる。実は画面に赤い物と緑の物を写すと両方とも同じくらいのグレーになってしまい、なんの写真かよくわからなくなってしまう。そこで赤フィルターを付けてやることで赤を白くして画面の中で分離させられる。この神輿も本来は赤いが、そのままだと背景の神社と同化してしまうので赤フィルターを使ってみた。すると神輿は白くなって見やすくなった。
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他にも黄色フィルターを使えば空が黒くなるので雲の形が見やすくハッキリした写真になる。
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フィルターなし
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フィルターあり
このようにフィルターを使えば白と黒だけだが、メリハリを付けやすくなって思い通りの結果を得やすくなる。私の場合はフィルターワークとは言っても私は常時イエローフィルターを付けているので、フィルターワークとは言い難いがフィルターがあるだけで一気に撮りやすくなる。
それに、一眼レフでフィルターを付けると視界が赤一色や黄色一色の世界になるので、白黒の世界を想像しやすくなる。トレーニングとしても丁度いいのでぜひ試してほしい。
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以上でフィルムカメラに慣れたら次の一歩としての白黒フィルムのすゝめとする。カラー写真に比べて分かりにくくて難しいが、色に囚われない白黒写真でしか感じられないリッチな写真表現にぜひ触れてみてほしいと思う。自分で現像もしやすく、プリントも比較的容易とされているのでアナログ写真を楽しむには最も美味しい分野とも言えるだろう。
それでは今回はここまで。今週も皆様にとって良き週末となりますように。
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