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カメラを持って"世界"を歩こう。

[アナデジ写真記]

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2025/8/8

フィルムカメラが教えてくれた3つのこと

前回のお話

 私がフィルムカメラを使うようになってもうすぐ3年。暑すぎて外に出れないのでここは一つ感じたことと考えていることを棚卸ししていきたいと思う。

 私が生まれて物心が着いたときにはフィルムからデジタルへ移行していた頃でアマチュアカメラマンでもなく、子供を撮りたいだけとか旅行の写真を、という層では置き換わりが進んでいたところだ。

 家にあったカメラも全てデジタルカメラでカメラと言えばデジタルだった。私が初めて触ったカメラはカシオ製の素通しのファインダーが付いている単に写すだけの単純なものだった。父親のお下がりで最初の1年か2年はこれで、その次がニコン製のコンデジになった。このカメラは今でも持っていてズームできるのがすごくうれしかった。2GBのSDカードを入れていたのでいくらシャッターを切っても満杯にはなることなく、無駄に大量に撮りまくっていたのでダメダメな写真を大量生産していた。

 その次が富士フイルムのネオ一眼。先のコンデジに比べて高倍率なズームが可能で一眼だと思い込んでいたので楽しくて仕方なかった。祖父からのお下がりでこれも8年くらいは使い続けて今も防湿庫の中で眠っている。

 不満はなく使い続けていたのだが、カメラ系YouTuberの動画が出てくるようになって色々試してみるとレンズの開放F値がズームすればどんどん大きくなっていくことや高感度での耐性の無さなどに限界を感じるようになってきた。そこに追い打ちをかけるように友人がオリンパスのミラーレス一眼を買ったのでますます新しいカメラが欲しくなってきた。

 新しくカメラを買うにしても如何せん知識がないので、ひとまずは友人にミラーレスを貸してもらうことにした。やはりミラーレスは凄かった。AFも速いし、画素数も多くて、質感もこれまで触ってきたカメラとはまったく違う素晴らしいものだった。

 しかし、あまりにも簡単に撮れてしまうので物足りなさを感じたのも正直だった。

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 そんな中押し入れを整理していると古いMINOLTAのフィルム一眼が出てきた。フィルムなんか36枚しか撮れない上に現像に出したりと面倒事が多いのでこれまで全く選択肢に上がらなかったが、せっかく出てきたので使ってみることにした。これまで光学式のファインダーを覗いたことがないので、その美しさは予想外だった。ミラーやシャッターの動く感触も非常に心地よくて気づけば虜になっていた。

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 残念ながらMINOLTAのカメラは電装系に問題があって、急に巻き戻しが始まって止まらなくなってしまうことがあった。そのため、撮影に電子回路を使わなくてできるだけ頑丈なカメラを買うことにして、出会ったのがNikonのFM2だった。初心者が勉強に使うことも多かったようで、フィルムカメラ初心者の私にはちょうど良かった。

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 フィルムカメラを使い始めて8月末で3年。まだ3年しか経っていないが、感覚的にはもっと昔から持っていたような気もする。そんなフィルムカメラが教えてくれた3つのことを紹介したいと思う。

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 まず一つ目は写真の基本。たくさんの方がおっしゃっていることであるが、私もこれには同意する。フルマニュアル機を使った場合ではあるが、ピントや写真の露出を自分で決めて写真を撮っていると自ずと身に付くものである。デジタルカメラだとPモードにすれば完全に自動で写真が撮れる。また、AモードやSモードで絞りかシャッタースピードを自分で決めたいときでもISOオートにすれば、任意の絞りやシャッタースピードで簡単に撮れる。しかし、フィルムカメラは一度フィルムを入れてしまえば途中では変えられない。感度固定というのが非常に良かった。明るいときは絞りを絞ってシャッタースピードも上げる。逆に暗いときは絞りを開けてシャッタースピードも遅くする。そうすると絞りは単にボケ具合を調整する道具ではないことが分かるし、シャッタースピードにも目が向くようになってくる。

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 また、低感度なフィルムを入れていると夕方や森などの暗いところに入ったときや焦点距離の長いレンズを使ったときに感度が足りないことがある。できるだけ脇を締めて手振れしないようにすると構え方も定まってくるし、シャッタースピードの目安である「焦点距離分の1秒」を割ってもブレなくなってくる。そうした構え方にしてもカメラが教えてくれたようなものだった。

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 二つ目は光の量は決まっていること。露出計と相談しながらカメラの設定を決めていると徐々に光の量が分かるようになってくる。カメラの内蔵露出計や反射光式の露出計を使っていると、カメラの向ける向きによって判定がコロコロ変わることに気づくだろう。もっと言えば白い壁を撮るのと、緑の木々を撮るのでは全然違う結果になることが分かる。しかし、上から降り注ぐ光は全て太陽から出ているので同じはずだ。

 そこで思い出したのは色ごとの光の反射率の違い。白はほとんどすべての可視光線を反射するので白いが、木の葉はほとんどの光を光合成に使うために吸収し、緑の光だけを反射するので緑に見えるという話である。つまり、反射して返ってくる光の量が変わるので露出計の数値は変わるが、被写体が受けている光の量は結局同じなのである。

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 そういうことを考えていると晴れていれば光の量は100%全てで、後は雲の量や上を覆っている障害物の量だけを考慮すればいいことが分かる。これが分かったことでカメラの露出計を覗く前にだいたいの露出が分かるようになったし、デジタル一眼を使うときでも思い通りの露出を作れるようになった。

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 最後はやはり写真を撮ることの楽しさ。フィルムを詰めて感度などを設定し、撮る前に巻き上げてから露出を決めてピントを合わせる。撮り終わったら巻き戻してフィルムを取り出して現像に出す。この一連の流れが非常に心地良い。SDカードを取り出してパソコンに移すだけのデジタルカメラにはない甘美な体験だ。それにフィルムをお店に出して現像とスキャンを任せてしまうのも良い。色合いの調整などはプロがしてくれるので撮影に集中できる。レタッチにあまり楽しさを見いだせなかった私にはちょうど良かった。

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 ここでは3つ紹介したが、他にも白黒写真の奥深さやリバーサルフィルムの圧倒的な美しさなど個別具体的に挙げていけばまだまだ出てくるというのが正直なところだ。先ほどはレタッチしなくて良いとは言った私であるが、レタッチしない代わりにネガプリントをしようと道具を集めているところだ。パソコンで写真を触るのはどうも得意ではなくて、手を動かしてフィルムを現像したりと物理的に触れる方が楽しいし気持ちが楽だった。デジタルと違って現像に失敗したら36枚全てが台無しになってしまうというリスクもあるものの、この方が性に合っていたようだ。

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 今回はここまで。今週も皆様にとって良き週末となりますように。

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