[アナデジ写真記]
毎週だいたい金曜日に更新するblog。
2024/9/6
新しいカメラは良いが使い慣れたカメラはもっと良い。
現在私が所有しているカメラはPENTAX17を除いてすべてNikon機で、フィルムのNewFM2とF2のフォトミック、デジタルのD780の4台である。私はデジタルが躍進した時代の平成育ちであるが、初めてのカメラはFM2であった。やはりフィルム時代の最初の一台として鉄板である本機は非常に使い心地が良く、操作系も非常に分かりやすい。
世間は完全にデジタルであるのに初めてのカメラをフィルム機にするのはなかなか勇気のいる選択だった。レンズとボディを合わせると当時の値段で8.8万円であった。この界隈がおかしいだけで9万円は十分に高額である。しかも、中古品であるだけでなく、壊れると修理にも苦労する代物である。写真部でもなく、周囲にカメラの分かる人がいるわけでもないので、中古のフィルムカメラを買うとなると結構反対されたものである。
そうしたことからできるだけ壊れない頑丈なカメラで市場に多く出回っていて修理が比較的容易が条件だった。そうしたことからNikonが選ばれNewFM2となった。
そんな経緯から、もちろんカメラを大事に使うし、元々持っていたコンデジで2日間の旅行で600枚ほど写真を撮るほどには写真が好きだったので、外に出かけるときは必ず持ち出していた。
いつでも持っているとやはり愛着が湧くし、操作にも慣れて失敗しないようになってくる。
1年くらいはFM2一台で写真を撮っていたのだが、フィルム機だけでは撮影枚数に限界があるし、フィルムだと中途半端な撮影枚数になって不便なときがある。そうしたことからデジタル機のD780を導入した。FM2を買う前はFUJIFILMのX-S10かNikonのZ50を買おうと思っていたので、まさかフルサイズになるとは思っていなかった。フルサイズにして思うのは、確かに画質の粘り強さとか余裕さ、繊細さというのを感じるが、やはり一番の利点は35mmフィルムとフォーマットが同じこと。レンズの画角が変わらないのがありがたい。
D780も買って練習やらフィルムが中途半端なときに持ち出したり、風景を撮るときにFM2の補助として持ち歩いていたのだが、人間の欲とは留まるところを知らないようで、さらに増やしたくなってきた。デジタルでもなく、FM2に詰めているフィルムでもないフィルムで撮りたいときがあるのだ。そういう訳でF2 を増やした。全てFマウントなのでレンズは共通であるのでボディの買い増しは比較的ハードルが低かった。それを狙ってFマウントにしたのもあるのだが。
そしてついこの前は一人のフィルムユーザーとして、PENTAX17は買わねばなるまいという謎の使命感から買い増し。そうして私の所有するカメラは4台になった。
新しいカメラとは非常に良いもので、新しい機能、使い心地、触り心地、重さから新鮮な風を送ってくれる。どんなふうに撮れるのだろうか、どれほど使えるのだろうかと考えながらシャッターを押すのは楽しいし、現像後のデータやパソコンでSDカードから取り出してみるのは非常にワクワクする。思惑通りに写っていると嬉しいし、失敗していても次はうまく撮ってやろうと意欲が湧いてくる。
新しいカメラを買って当分の間はそのカメラに付きっきりになるのだが、ある程度クセや操作方法を覚えて馴染むと再び元々持っていたカメラに帰ってくる。
触り慣れた巻き上げレバー、ダイヤル、巻き戻しノブ、レリーズボタンを触るとどこか安心感がある。良く知った重量感や露出計のクセ、巻き上げレザーの引き心地、シャッターの音と衝撃。まるで古くからの友人に会ったときのような心地の良さを感じる。
新しいカメラも良いが、使い慣れたカメラはもっと良い。”新しいカメラ”を増やして非常にそれを感じる。買った物は初めは”新しい”が、使っていると”使い慣れた物”になってくる。時が経てばそうなる訳ではなく、しっかり使い込まないと意味がない。使い慣れた物にするには優れたスペックや気の利いた機能は不要である。とにかく使い込むのみである。気持ちよく使い続けるにはそれ相応に買う前に調べておく必要があるし、どんな馬にでも乗ってやろうという気概が必要だ。
事務用品メーカーのLIHIT LAB.はキーワードに「良い品はお得です」という言葉を掲げている。長く気持ちよく使い続けることができるなら結果としてお得ですよね、という意味だそうだ。買う前に自分はどんな物が欲しいのか、何をしたいのかを考えて物を買えば、長く使えて「使い慣れた物」にできるだろう。無駄にお金を使うこともないし、旅行のような一度きりの思い出も物をその象徴とすることもできる。
私の場合だとFM2は白馬や松山旅行と冬のスキーに、F2は鹿児島旅行というように、どの思い出をどのカメラで切り取ったかを良く覚えている。旅行のような写真は風景を写すというよりも自分の気持ちを写すというような感覚で、カメラを見れば「あの旅行に行ったよな」と幸せな気分になれる。
コロコロとカメラを変えていればそんな感覚にはなれないし、売ってしまえば記憶も捨ててしまっているようなものだと思う。写真を撮ることで利益を出す必要のないアマチュアカメラマンだからこそできることで、プロにはできない。だからこそ、プロのカメラマンは自分用にLeicaを買うのだろう。
買う前に良く吟味し、責任を持って使い続ける。大量消費、使い切りの時代において、物の良さを存分に享受し、本当に贅沢な体験をするには案外そういったことが必要なのかもしれない。音楽や本、映画などと同じように自分に染み込ませて初めてその本質にたどり着けるのだと私は思う。
まだやりたいことが見つからない人はどうすれば良いのだろうか。私のオススメはできるだけ小さいカメラを買うことだ。誰かが言うような高級機を買って体力を使うくらいなら、中古でも良いから安く抑えてあちこちに出かけたほうが良い。それに高級機になると必ずと言っていいほど重くなって持ち出すのが難しくなる。それに高機能なカメラを買い増したとしても、普段遣いや旅行用などのサブ機として共存可能である。
私はフィルムがメインなので、フィルム機しか勧められないが、PENTAX17は非常に良かった。ハーフなので普通の倍の枚数撮れるし、AUTOにしておけば、まず失敗しない。それにフィルムだとピントを外していても何故か許せるし、それはそれで良いなと思える。
まだ私のカメラは4台であるが、これまで戦略的に増やしてきたこともあり、現在では全てのカメラを満遍なく使うことに成功している。これからさらに買い増すことになると思うが、どのカメラもしっかりと使い込んで存分にモノが与えてくれる幸せを享受していきたいと思う。
それでは今週はここまで。皆さまにとって良き週末となりますように。