[アナデジ写真記]
毎週だいたい金曜日に更新するblog。
2024/5/17
行かふ年も又旅人也-春の日本海
この前のGWにまた日本海に行ってきた。大阪からだと決して近くはないが私は日本海が好きだ。砂浜が多くて夏の波は穏やか。太平洋は緑がかった暖かい海だが、日本海は青くて透明な冷たい海。まさにblue oceanといった感じの海だ。
今回の目的は丹後半島の先、経ヶ岬付近にある袖志の棚田へ写真を撮りに行くことだった。昨年度だけでも6回通っているので距離感覚が麻痺しているが、さすがに経ヶ岬となると遠かった。夜明けを狙って0時前に自宅を出発し、途中20分だけ仮眠をとった。段々と明るくなる空に追い立てられるように海岸沿いを進み、4:30になんとか到着できた。
袖志の棚田は割と有名な撮影地であるので同業者がいるかと思ったがほとんど見なかった。どうも夕日の名所であるから人はいないらしい。
リバーサルフィルムなので無駄打ちはせず、サクッと撮影を済ませる。間人まで戻ってデイリーヤマザキでサンドイッチを買った。
目的が済んで最早やることがないわけだが、前回の鹿児島旅行は非常に忙しかったので、今回は一人でゆっくり流れる時間を楽しむことにした。
穏やかに流れる時の流れを感じたい。そんなときにフィルムカメラはうってつけである。裏蓋を開け、フィルムの箱からケースを取り出し、開封してフィルムを引き出す。そして上下逆さまにしてフィルム室に入れ、フィルムのベロを軸に差し込む。そして裏蓋を閉めたら巻き上げる。この一連の動作が素晴らしい。一度フィルムを入れると撮影が終わるまで取り出せないし、確認もできない。測光し露出を決め、構図を固めてレリーズボタンを押す。
私はデジタルカメラでも写真は撮るが、やはりこれほど贅沢な体験はデジタルでは感じられない。
サンドイッチを食べ終えた私は再び海岸沿いの国道を北に進み、下りられそうな砂浜を探す。10分ほど走ると海岸まで集落が広がる平地が見つかり、海岸に下りてみた。車も無事に止められ助手席に掛けたF2を取り出す。裏蓋を開け、フィルムをケースから取り出して装填。裏蓋を閉じて巻き上げる。
カメラと最低限の荷物だけ持って砂浜を下っていく。砂浜を歩くにはできるだけまっすぐ地面を踏むようにしてゆっくり歩く。斜面も同様で焦りは禁物である。落ち着いて歩かないと靴は砂まみれである。また波打ち際も歩きやすい。適度に濡れており、沈み込みにくい。だからと言って油断していると波に靴を洗われる。
そんなことを考えながら真ん中ほどまで歩いてきた。日本海の砂浜は川が流れ込んでいることが多い。ここも川が斜めに砂浜を横切っていた。
透明な川の水が透明な海に注ぐ。私はこの川を渡ろうと上の方へ歩いたり、跳び越えられるか距離を考えてみた。やはり柔らかい砂の上でそんなことをしたら川に真っ逆さまなのは目に見えている。それじゃあできるだけ浅いところの石を踏んでいこうと思うが、靴底の汚れが川に滲むだけで距離が足りない。
結局渡河は断念して引き返す。毎度川を渡ろうとするのだが、簡単には渡らせてくれない。
もと来た道を辿り、時の断片をフィルムに焼き付けてゆく。
川が削った砂浜、
漁師が使ったのだろうロープ、
崩れゆく砂丘。
確かにそこには”時”があった。
丸く削られた玉石は光を反射してピカピカ光り、黄土色の砂浜に黒や茶色の小石が映える。
陸の方に目を移せば栄養もない砂地でも健気に植物が芽を出していた。
1時間ほど経ったのだろうか、クルマまで戻ってきたので、再び移動することにした。集落を抜けて国道へ出るのだが、この集落も素晴らしかった。板張りの家屋が日本海らしい。
丹後は昨年だけでも6回、これまで数え切れぬほど来ているが未だに経ヶ岬は踏めていない。そこで灯台まで行ってみることにした。海岸をさらに北に進み駐車所へ。10分ほどで到着。駐車場も崖の上にあり、水平線まで見晴らせる高台だった。
クマバチがブンブン飛び回る中を、20分ほど階段を登ると灯台に出る。
白亜の灯台で、大きなレンズが入っている。国内で最大規模のレンズらしい。
灯台は小ぶりではあるがかなり高いところに建てられており、海面は霞むほどだ。崖下の岩場から灯台を建てるための石材を運んできたとの説明が書かれていた。この高低差を大した機械もない明治期に上げてきたと考えると脱帽である。
一通り見て回り時間は10時半になった。当日はGW後半初日ということもあり、徐々に人出が増えてきた。せっかちな私は渋滞が大っ嫌いなので、そろそろ引き返すことにした。4時半から写真を撮っているわけで、すでに満足である。蕎麦でも食べて帰ろうじゃないか。
今回はここまで。今週も皆様にとって良き週末となりますように。