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カメラを持って"世界"を歩こう。

[あなでじ写真記]

毎週だいたい金曜日に更新するblog。

2026/01/09

孤独な男と冬の日本海 | NikonD780

前回のお話

 生まれてずっと大阪に住んでいる私にとって雪景色は最も希少で惹きつけられる被写体と言っても過言ではない。大阪から雪を見に行くとなると、滋賀や京都の北部、はたまた奈良県南部の高い山々を目指すかという選択肢になる。

 小学生の頃から父親に連れられて釣りに出かけたことから京都の北部には馴染みが深く、季節を問わず写真を撮りに出かけている。そうしたことから必然と3つの選択肢の中から京都北部、とりわけ丹後が選ばれるわけである。それに加えて丹後の釣り船の船長が送ってくれた雪の砂浜の写真が脳裏に焼き付いている。雪の積もった白い砂浜に大きな波が打ち寄せ、空は青黒くて塊のまま落ちてきそうな湿気の多い雪雲。日本海という詞が象徴する冷たくて寂しい、しかし激しいその光景を自分の目で見たい、写真に収めたいということもあって今年も予定を縫って北を目指す。

 幸いなことに今年は正月休みの間に大きな寒波と雪雲がやってきた。年が明けて間もない2日、朝の4時前から車のセルを回して出発する。普段であればできるだけ交通費を押さえるために高速道路は使わず、使う場合でも途中からにするが、遅めの出発であること、雪道にそれほど慣れているわけでもないので、より整備状況の良い道を使うべく贅沢に全行程で課金する。昨年は大山崎JCTから京都縦貫道に入れるとすぐに50km/h規制が掛かっていたのだが、今回はそうでもない。少しの不安はあったがそのまま進む。しかし、進めども進めども一向に雪は降ってこない。綾部まで来ても雪の「ゆ」の字もなくひたすらドライな路面が続く。京都縦貫道も終わりが近い宮津天橋立本線料金所でようやく降り始め、スイッチが入ったように一気に積もる雪になった。

 現在の終点である京丹後大宮で高速を降りると既に雪は積もり始めていた。日の出が遅い上に空は厚い雲に閉ざされて6時を過ぎているのにまだ真っ暗だった。車通りの少ない国道を引き続き北に向かい、近畿最北端の経ヶ岬を目指す。高速道路を降りてからさらに1時間ほど走って経ヶ岬の少し手前にある袖志の棚田に到着。積雪は5cm程度あり地面は白く覆われているものの、自動車でも容易に通行できるくらいで楽々の撮影だった。昨年の2月に訪れた際は積雪が30cm以上あって長靴で入っても上から雪が入ってきて大変苦労した。今年はワカンを買おうと思ってまだ買っていないのだが、1月だとまだ大丈夫だろうという読みが当たって良かった。

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 カメラを雪から守るためにビニール傘をさして写真を撮っていると、雪が湿っぽいのでどんどん傘に着雪して重くなってくる。首からF2を、肩にはD780を持っているとどうしても780に付けた28-70のズームレンズが腰位置くらいになって鏡筒が白くなってしまう。いやだなぁと思って振り落とすもどんどん付いていく。何かいい方法はないものだろうか。

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 袖志の棚田は海岸段丘上に形成されており、少し歩くと段丘崖になる。崖を削って付けられた道を下ると急に波の音が大きくなる。北海道や東北の豪雪地帯で雪景色と言えば無音とよく言われている。厚く積もった雪が音を吸うために音が聞こえなくなるからだ。しかし、丹後は雪が降ると言ってもそれほど豪雪ではなく、雪の吸音効果よりも荒波が打ち付ける轟音が優勢である。雪のない地域で生まれ育ったこともあって、「しんしんと」静かな冬ではなく、何かしらの音が冬でも聞こえている。それにスキーをする家だったので冬は旅行の季節。高速道路を走るトラックの走行音が私にとっての冬の音なのかもしれない。

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 雪は弱まったり強まったりして海が見えたり、また見えなくなったり。少しずつ歩いてきた足跡も消えていく。崖下の集落は海とも挟まれて身を寄せ合うようにして建っている。屋根は白く雪と強風、そして荒波に耐える。

 しばらくしてフィルムをほとんど使い切ってしまったので車へ引き返す。車にはすでに5cmほど積もっており、雪を落としてガラスの曇りが取れたら次の撮影地に出発する。とは言ってもいつもの浜辺である。

 昨年の2月は雪が多くて停められなかったのだが、今回それほど多くないのですんなりと停められた。カッパを着て傘をさして再び出かける。しかし、風上に向けているに関わらず、強風に傘が耐えられず骨を全て折られしまった。畳もうと思ったときに風が逆向きに当たってしまい、今度はバンザイするように逆向きに再び折られてしまい見るも無残な姿に。仕方なく、カメラはカッパの中に仕舞うようにして780の一台だけ持っていくことにした。

 大波を大きく写すべく135mmの単焦点を付けて出かけたのだが、今回は波の向きが悪く、それほど大きなものは入ってこなかった。その代わりに真っ白な砂浜に海との間の黄色い帯。そして黒い岩山に、遠景の雪が積もって灰色になった山々が雪で霞むという非常に日本らしい景色が広がっていた。慌てて車に戻りレンズを50mmに変更する。

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 素晴らしい、これこそがずっと見たかった景色だ。

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 雪の浜辺を歩いてベストなポジションを探す。

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 この砂浜に通うようになって3年目であるが、何度来ても飽きない。スタンプラリーのように新しい場所に行き続けるのも良いが、同じ場所に通っていても同じ条件では二度と撮れない。昨年の1月も非常に条件は良かったが、今回の条件の良さとも全くの別物だった。今回は雪が積もっている代わりに波は低く、昨年は雪がない代わりに波が高かった。やはり写真は面白い。写真が面白いというよりも言葉を話さない被写体との対話が楽しいのかもしれない。

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 激しかった雪は弱まり、雲の切れ間から光が差してきた。

 同じ日でも少し時間が経つと一気に条件は変わる。

 日が差しているのも束の間で沖に目をやると既に次の雲が控えている。遠くの岬が徐々に霞むようになり、雪のカーテンが徐々に迫ってくる。再び雪が舞うようになって、すぐに視界は悪くなる。

 あまり長居すると道路に雪が積もって動きづらくなるのと、カッパが染みてしまって普通のダウンジャケットを着ているので雪が激しくなる前に撤退する。最後は去年現像に失敗してムラを出してしまった網野駅に行って帰ることにした。あいにく駅は全て白黒フィルムで撮っており、未現像であるため後の機会に紹介できればと思う。

 今回はここまで。帰り道も引き続き雪は降り続き道路は溶けた雪やら融雪用に撒いている水でビチャビチャな常態に。帰り道の国道のライブカメラで見てみると相変わらず雪が厳しいようなので帰りも途中までは高速道路を使うことにした。山をトンネルで越えてしまうと雪は止み、青空と白銀の山々が美しかった。作業車が前にいるのか車列の歩みは牛歩であるが、道を整えくれる人がいないと進めないので仕方がないだろう。対向車線では前後ろが逆向きになって路肩の雪山に突っ込んでいる車もおり、焦らずに着実に帰るのが肝要だろう。今週も日本海側ではたくさんの雪が降るようなので、お住まいの方は大変だろうと拝察する。今週も皆様にとって良き週末となりますように。

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