[アナデジ写真記]
毎週だいたい金曜日に更新するblog。
2025/1/24
白黒フィルムでお伊勢参り
いつも出かけると言えば車な私であるが、年に一度のお伊勢参りだけは鉄道を使うようにしている。伊勢に参るようになったのは中学の頃で、友人が私の乗車券まで出してくれたときに初めて参拝した。彼の父は近鉄社員で彼だけの分ではなく、私にも与えてくれたのだった。始発に近い電車で大阪を出発して急行でひたすら東に進む。当時の私のお小遣いは月に800円だったので特急など乗れるはずもなく、3時間ほどかけて伊勢に向かった。
途中の大和朝倉までは行ったことがあったが、そこから先は未知の世界だった。中学生の私には十分な冒険であのワクワク感は未だによく覚えている。高校生になって彼とは会わなくなったが、私は隔年ぐらいでは参拝を続けてきた。初めは往復とも急行だったのが大学生になって帰りは特急になり、今では往復とも特急になった。
3年前からは毎年参るようになり、今年も近鉄特急で行ってきた。個人的なマイ・ルールは一度上本町まで出ること。上本町の地上大阪線の櫛形ホームが好きで鶴橋から乗ればいいのだが、無駄に上本町まで出る。

ここから伊勢市駅までは特急伊勢志摩ライナーで2時間と少しの旅。乙特急であるので停車駅が多く、ゆっくり目ではあるが急ぐ必要はない。大阪平野から奈良盆地を横断し、榛原、名張の盆地を繋いで最後に青山高原を越えて伊勢平野へ下る。最後に櫛田川と宮川を渡れば伊勢に到着。


今回の機材はNikonF2といつもの50mm f/1.4。F2の重さにも慣れて最近はFM2よりもよく使っているかもしれない。

駅を出たら左手にある観光案内所へ。今回は自転車を借りて外宮と内宮を周ることにしていたので、予約していた。元々は車を借りるつもりだったのだが、故障により貸してもらえなくなり自転車になった。当日は伊勢のマラソンだったようで、伊勢市内は大渋滞。車を借りれなくなったことが実は幸運だったようだ。
自転車は少し待ったものの無事に借りられ、ひとまず腹ごしらえをすることに。伊勢に来たら伊勢うどん。好みは分かれるが伊勢に来たら必ず選ぶくらいには好物である。いつもは内宮の岡田屋で食べるが、おかげ横丁はいつも混雑が酷くて自転車を持ってあの人混みは歩けないと思い伊勢市駅の近鉄側にある「まめや」でいただくことにした。

神宮の近くでもなく、どちらかというと駅の裏口であるので観光客らしき人は少なく地元か元々は住んでいたような雰囲気の人が多かった。レビュー通り味も良く満足であった。
うどんを食べたら自転車に跨り、いつもとは違う道で外宮まで行くことにした。狭く曲がりくねった裏道には板張りの建物が建ち並ぶ。


うどん屋から外宮までは10分程度で到着し、管理小屋の後ろに設置された小さなスペースに駐輪した。
火除橋を渡り、少し行くと境内に入り、正宮など多数のお宮がある。毎回全て回っているので小銭の消費量が激しい。

神宮の中は基本的に森なので、今回はHP5+をISO800相当に増感することに。日当たりが良ければ400でも問題ないが日陰を撮ると少し厳しくなるので800にした。今まで現像液はID-11を1+1で時間をかけて増感していたが、ID-11が入手困難になったので少し高いが同じくILFORD製のDD-Xに変更。液体現像液でHP5+だと3段増感まで可能。さらに増感してもしなくても希釈率は1+4のままなので便利だ。
さて、今回の現像結果であるが、粒状感は問題なし。微粒子で結果自体には満足しているのだが、少し濁ってしまった。おそらく私のF2は露出計の精度に少し問題があるのだと思う。実際よりも露出計が明るいと判定していると思われるのでISO400の場合は200にというように1段分明るく撮ってやる必要があったのだと思う。これ以降は補正して使っているので、現像したら結果を確認したい。
話はそれてしまったが、本題に戻る。全てのお宮で手を合わせたら自転車置き場に戻る。いつもは馬小屋はあれど馬はいたことはなく素通りしていたのだが、今回は神馬がいた。白馬でまさに神馬に相応しい。

馬小屋を後にしたら再び自転車に跨り、今度は内宮を目指す。最短経路で向かうために今回は御木本道路を使ったのだが、伊勢自動車道を越えた辺りから激しい渋滞になって道路の車列はほとんど動かない状態に。元々はタイムズのカーシェアで車を使う予定だったのが、貸し出し不可になって自転車を選択することになったのは神の啓示とでも言うべきかと思う。伊勢に来るときは、私が行ったときだけ晴れたりと伊勢に関しては結構な運があるようだ。
宇治橋からほど近いところに駐輪し、五十鈴川を渡る。前日までの降雨で宮川や櫛田川は増水して茶色く濁っていたのだが、五十鈴川は水量こそ多いものの澄んだ水が流れていた。やはり神の川は簡単には濁らないようだ。






ひとまず正宮に参拝して手を合わせ、外宮同様に全てのお宮に向かった。正宮から荒祭宮に向かうときには少し注意が必要で、荒祭宮正面にある石段の途中にある「踏まぬ石」を踏んではいけない。踏むとケガをするという謂れのある石なのだ。石には横向きにY字の亀裂が入っており、段の中央にあるので気をつけて進めば簡単に見つかるので、ぜひ探してみてほしい。
伊勢神宮内宮の参拝が終わったら今度はJR参宮線を越えて、勢田川のほとりにある二軒茶屋餅角屋本店に向かう。内宮からは電動自転車で30分ほど走れば到着する。

伝統的な建物で、使っておられる固定電話はダイヤル式の黒電話が現役。店の前のポストも丸ポストでここだけ時代が違うみたいだ。二軒茶屋餅はきな粉餅で、やさしい甘みが緑茶によく合う。外装も10個以上になると竹の皮で包まれており、雰囲気も抜群。少し観光地から離れるが、販売箇所も限られているのでお土産にはうってつけである。
餅を買ったらいよいよこの旅最後かつ最大のイベントへ。角屋から自転車を15分ほど漕いで宇治山田駅へ。最後のビッグイベントは特急「しまかぜ」への乗車である。ここ3年連続でしまかぜに乗っているが、これが本当に飽きない。2時間足らずで伊勢から難波まで到達するので他の交通機関に比べて圧倒的に速い。これがなかなかいけないところで、2時間で終わってしまうというのが正直な感想。5時間でも6時間でも乗っていたいところなのだが、2時間なのである。

駅で土産物や車内で食べるお菓子を買っているとすぐに乗車時刻になった。ロビーの端にある階段から二階にある改札を通り、もう一度階段を上がると3階のホームに。
しばらくすると「しまかぜ」がやってきた。石張りの床に革張りの座席。とにかく内装が豪華で、リクライニングももちろん電動。特急列車というと人を運ぶために座席が付いていて、課金すれば座れるというのが一般的なシステムだ。しかし、しまかぜには食堂車が付いていて、この席はいわゆる「座席」ではない。近鉄からすれば料金が取れない席だ。

この食堂車に行って食べ物を注文するというのが最高に贅沢で、暮れゆく車窓を眺めながら食事を取れる。私は中華まんセットを頼んだ。しまかぜの焼き印付きの豚まんにスープが付いている。値段もそこまで高くはなく、夕方のおやつにちょうど良かった。



食堂車から自席に戻る。戻るとは言ってもそのまま戻るわけではなく、カウンターで紅茶を注文。残りの1時間半ほどは自席で紅茶をキメながら買っておいたポッキーを食べようという算段だ。
列車は滑るようにしてレールの上を走り、他の列車とすれ違っても気圧の変化を全く感じさせない。残念なことにあっという間に生駒山地を越えて大阪平野に入り、すぐに地下へ潜り込んで終点の大阪難波に到着。これにて今回の伊勢参拝は終了。また来年も参拝することになるだろう。
神宮に関しては例年のことであるので、わざわざ感想を述べることはないが、今回自転車で周ったのは非常に良かった。次回からも天気が良ければ自転車かもしれない。3回目の乗車となるしまかぜも相変わらずのクオリティの高さ。少し前に日本唯一の定期運行している寝台特急であるサンライズに乗車したが、個人的には比較しても遜色ない。たったの2時間の乗車時間でこれだけ満足できるのだから、企画者と開発者はすごいと思う。年々競争が激化しているが、来年もなんとか乗りたいところである。
今週はここまで。今週も皆様にとって良い週末となりますように。