Grouse Photograph Galleray

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[アナデジ写真記]

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2023/11/10

適正露出とは結局何なのか考えてみた。 − 適正露出① −

前回のお話

 キーワード:白トビ、黒つぶれ、気持ち、視線

 キーフォト

 適正露出とは何なのか。かなり大きなタイトルだが、現時点で私が理解している範囲でお話したい。

 と,云うのもカメラが露出を決めてくれる現在では露出について語られることは非常に少なくなったように思う。その代わりにデジタル処理(RAW現像,レタッチ等)の比重がかなり大きくなっているような気がする。私も一時期はデジタル処理の方法に腐心した記憶がある。デジタルデータの場合は暗く撮った場合(アンダー)には耐性が大きいが,明るく(オーバー)になった場合は白トビして細部を再現できないことが多い。そのため,中には真っ暗なRAWデータを作成して,そこから部分補正で明るさを足していくような手法もある。

 そんな便利なものがあるにも関わらず,撮影時に完全に決めてしまおうというのが今回のコラムの趣旨だ。適正な露出でしっかりと決めておけば、後の段階のレタッチに入っても何時間もかける必要がなくなり、より自然にできるようになると思う。

 それでは、本題に。露出は構図と並んで写真を構成する非常に重要な要素だと思う。構図と露出さえしっかりしていれば、写真として成立していると言えるだろう。

 構図は見た目ですぐに判断できるので、3分割の線を画面に表示させるなりすれば割とスグに整えられる。しかし、露出は厄介で、絞り(F値)とシャッタースピード(以下 : SSと表記)、感度(ISO)の3値で明るさを調節するという代物だ。ミラーレスであれば、結果がファインダーに出るが、レフであれば全く分からない。AモードやSモードなどの自動の露出モードを使っている場合だと「露出補正」を使えば好きな露出に調整できる。

 私も露出補正の使い方がかなり長い間使い方が分からず放ったらかしにしていた。白トビを抑えたり、黒潰れしないようにヒストグラムを出して調節するという説明を聞いたことがあるのだが、カメラの露出モードも優秀なのでこちらで補正することもほとんどない。

 そこで考え方を変えてみた。本当に白トビと黒潰れはいけないものなのだろうか。

 これは画面のかなりの面積が黒潰れした写真。リバーサルフィルムなので白トビ黒潰れが起きやすい。カメラの露出だと建物の構造も分かるようにしつつ、夕焼けも写るように設定される。でも、私が「美しい」と感じたのは夕焼けの雲で、建物なんかどうでも良かったのだ。だからこれでOK。

 今度は太陽の周辺が白トビしたもの。これもjpegで撮ったまんまで手を付けていない。私が見たかったものは大仏殿の屋根と生駒山の稜線。太陽が白トビしようが別に構わない。太陽の周りもきれいに収めようとすると屋根の辺りが暗くなってしまう。後で部分補正やらで直せば収まるが、そんなことしたら太陽が暗くなってエネルギーは失われてしまう。

 明暗差が激しい場合では全てを写し取ることはできないし、必ずしも全てを写せれば良いという訳ではない。自分は何を撮りたいのかを考えて、撮りたいものに露出を合わせる。要らないモノは黒潰れさせても良いと思うし、明るい部分が白トビになってしまっても、構わないだろう。

 明るさのゼロ(真っ暗)から100(真っ白)の間で、カメラが切り取れる範囲が50ならどの部分で切り取るのか。カメラのA、S,Pモードなら間違いなくド真ん中の25から75の間を切り取るだろう。しかし、0〜50でも15〜65、50〜100も選び得るのだ。好きな範囲を好きに写せばいい。

 結局、自分は何を視たのか、何を残したいのか。目の前の光景に自分なりの解釈を加えて、写真にする。これが「撮影」だと思う。人間の記憶なんて実に曖昧なもので、すぐに劣化が始まってしまう。だから感じた瞬間に景色と一緒に自分の気持ちを缶詰にするのだ。

 帰って開封して、その時の記憶が再現されたら成功。「うん、写真。」だと失敗。捕まえる前に「気持ち」が逃げてしまったのだと思う。

 缶詰を作るうえで構図だけだと「気持ち」は逃げてしまいがち。だから私は露出にもこだわる。露出が取れるようになると逃げられることは少なくなった。

 しっかりと缶詰作りが成功したときの露出。それこそが私が考える「適正露出」だ。

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